サバイバル育児

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【難病】二分脊椎症って知っていますか? ④

様々な合併症と治療法

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前回までは、妊娠中に胎児の二分脊椎症が分かってから出産するまで、二分脊椎症の様々な症状、病気の予防法などをお話しました。

今回の記事は、産まれてからの治療法合併症についてです。


【難病】二分脊椎症って知っていますか? ① - サバイバル育児

 

【難病】二分脊椎症って知っていますか? ② - サバイバル育児

 

【難病】二分脊椎症って知っていますか? ③ - サバイバル育児

 開放性の二分脊椎(脊髄髄膜瘤)といっても、妊娠初期~中期までは胎児の体自体が小さいので背中に飛び出したコブもとても小さいです(数ミリ~1、2センチ)

そのせいか、私の子供の様子が通常の発育と違う事に最初に気が付いた先生も、病名までは分からず、体に対しての頭の大きさが通常の発達と違うことに注目していました。

エコーで胎児を見るとき、(頭の大きさ)(お腹周りの大きさ)(大腿骨の長さ)の3つを先生は測っています。

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胎児の体のパーツごとに妊娠週数の平均の大きさに達しているかを見ているのです。

もちろん四肢の欠損や臓器の疾患がないかも診察しますが、「順調ですねー!」と言われた時は、推定体重がおおむね平均通りだったという事です。

私の場合、胎盤がそれぞれにあり(栄養の取り合いが少ない)

①2絨毛膜2羊膜双胎(DD双胎)

 2人は別々の胎盤を持ち、双子間で血流が影響しあうことはありません。1人ずつ羊膜に包まれ、別の部屋で発育します。双子妊娠で最も多くみられるタイプで、70〜75%を占めています[*1] 。二卵性の双子は2個の受精卵から発生し胎盤が2つ作られるので、ほぼすべてがこのタイプになります。

胎児の体格差が出にくいタイプの双胎妊娠だったのですが、20週近くになるにつれて一人の推定体重が少なく差が出始めました。

「双子だし差が合って普通だよー。」と最初言っていた先生も、段々と「でも頭と大腿骨だけズレるなー?お腹は同じなのに。」と首をひねり出します。

頭の大きさのうち、おでこから後頭部までの長さは普通なのに、こめかみ同士までの長さ(顔の横幅)が短いとのことでした。

足も少し短いのかな?と先生は何度も測りなおしていました。

そして転院先で脊髄髄膜瘤という病名が分かった時、頭の成長がずれたのは水頭症キアリ奇形の症状だと説明されたのです。

下肢の膝から下も、先天性の内反足のせいで曲がっている様でした。

この3つの症状は二分脊椎症によくある合併症の一種です。

Neuroinfo Japan:水頭症

二分脊椎症の患児では脳あるいは他臓器に合併奇形を認めることもまれでなく,これが病状をさらに複雑なものとします.とくに脊髄髄膜瘤の患児では,水頭症(90%)やキアリ奇形(90%),多小脳回症,脳梁形成不全などの中枢神経系の合併奇形以外に,脊椎側彎症,股関節脱臼,下肢の変形,泌尿器系の奇形,水腎症などの全身的な合併奇形あるいは合併症が多く見られます.そして,これらの合併症が患児の機能障害と予後を左右することになりますが,小脳扁桃と延髄が脊椎管内へ逸脱するキアリ奇形では(図4),脳幹機能障害のために呼吸障害をともなうことがあるので注意が必要です.

私の三男ひなたんは上記の引用文の例通りに、水頭症、キアリ奇形、水腎症、尿管の狭窄、内反足、股関節の固さなど沢山の合併症があり、手術が終わって退院した現在もそれぞれの外来に通って治療を受けています。

同じ疾患の子供を持つ御家族以外は「何のことやら?」状態だと思うので、それぞれの説明をまとめますね!

 

脊髄髄膜瘤の合併症

水頭症の発症と治療】

Neuroinfo Japan:水頭症

水頭症とは何らかの原因によって髄液の循環・吸収障害が起こり,その結果,脳室の異常拡大が生じたもので,小児,成人を問わずに発生し得る病態です。

髄液は脳を外部の衝撃から保護し、脳圧をコントロール、脳の老廃物の排泄、栄養因子やホルモンの運搬などの様々な役割があると考えられています。この髄液は、脳の中にある脳室と呼ばれる風船のような部屋の脈絡叢から産生されて、その後脳及び脊髄の表面を循環して、脳や脊髄実質のとても細い毛細血管から吸収されると考えられております。しかし、正確な髄液の吸収部位は明らかになっておらず、頭蓋の正中に存在するくも膜顆粒、その他脳・脊髄神経周囲腔、頸部リンパ組織でも吸収されると考えられています。

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ひなたん

水頭症の進行具合を測る為、頭囲の計測位置にマジックで印がつけられる。

 落陽現象のために黒目が下瞼の方へ下がりがち。

  • 落陽現象らくようげんしょう

     黒目が下まぶたに入り込むような現象のことです。水平線に夕陽が沈むような様であることから、落陽現象と呼ばれます。

 

二分脊椎症の場合、お腹の中にいる胎児期には披裂した脊髄から髄液が漏れている為、大きく膨らむ水頭症にはなりにくいです。
ですが、感染症の予防や神経の保護の為に脊髄の整復手術をすると、多くの患児は髄液の循環吸収が上手くいかなくなって段々と脳室に髄液が溜まり始めます。

髄液は体の中で一番きれいな液体で1日に約450mLが産生されます。普通の髄液の総量は大人で約150mL、小児で100mLといわれていますので、髄液は産生から吸収まで一日に約3回程循環して入れ替わっていることになります。2)もしこの髄液の循環経路が何かしらの原因で流れが悪くなると、脳室内に髄液が停滞し、脳室が次第に拡大します。拡大した脳室が脳を圧迫することで様々な症状があらわれます。

ひなたんは胎児期から脳室の拡大がありましたが、産まれた直後に脳の手術(シャント)が必要な程度ではなかったです。

双子で低体重だったのもあり、生後20日以上経ってから帽状腱膜下シャント術を行いました。

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シャントは脳室にチューブを留置して頭蓋骨の外へ髄液を出すための処置です。

このうちの腹腔に髄液を逃がすVPシャントを予定していましたが、様子を見る為にまずは帽状腱膜下にシャントをつなげました。

頭頂部を広く覆う、薄くて丈夫な結合組織の膜。前頭筋後頭筋側頭頭頂筋と結合し、皮膚とは密に、骨膜とは疎に結合している。→腱膜 (けんまく)  →後頭前頭筋

帽状腱膜下シャント術 脳室から髄液を帽状腱膜下に貯留させる

ひなたんは生後すぐの脊髄の手術後からこの手術を受けるまでの間、低体重だったので体重を増やして体力をつける必要がありました。

その間も少しづつ水頭症は進行しているので、(NICUで毎日頭囲を計測)眉毛から額の辺りが通常の発達より進んで膨らんでいきます。

抱き上げても視線が合わず、下を見ているような目をしている事が多かったです。

 シャントの手術後はだんだんと落陽現象は無くなっていきました。

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ひなたんシャント手術後

【キアリ奇形二型】

ja.wikipedia.org

ひなたんは今のところ呼吸が苦しくなる症状はまだありませんが、普通の人よりも小脳や延髄が頸椎の方へ引っ張られて下がっています。

症状が強く表れた場合、また手術が必要になるかもしれません。

 

【内反足】

先天性内反足 - Wikipedia

kcmc.jp

ひなたんは脊髄の神経が損傷した為、下肢の筋肉や腱を上手く動かすことが出来ません。

産まれた直後は足首が自分の顔の方を向いて、スネにぴったりとくっついている状態でした。(歩くとしたら、小指側の側面しか地面につかない様な形)

手足の神経は引く力と押す力を自由自在に操ることで柔らかく動かせて、物に触れた感覚で上手く力の加減を調整し、バランスをとっています。

神経が断裂などにより完全にマヒしていると、少しも動かせなくなります。

でも例えば、足首を上に引き上げる力だけが働いていて、下に下げる力が弱まっている様なマヒの仕方ですと、つま先はずっと上に向いたままで地面を踏み込む力が弱くなり、まっすぐ立つことは難しくなるのです。(かかとしか地面につかない)

拘縮はなぜ生じるのか :拘縮(こうしゅく)がある患者の日常生活援助 :特集 |アルメディアWEB

このマヒの程度は損傷した脊髄の神経の場所によって様々です。

まったく足が動かない人も居れば、筋肉を柔らかくするリハビリや装具を付ける事で、歩いたり出来る事もあります。

あまりにもこわばりが強いと、靴擦れなどでケガをしやすいので腱を繋げなおす手術をしたりもします。

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ひなたんは、脊髄の神経がL4という個所でマヒしています。

上の方の神経が損傷するほど重症になりやすいのですが、ひなたんは膝までは自分で動かせるので二分脊椎症の中でも下の方のマヒではあります。

それでも、ふくらはぎや足首が動かない事によって血流が悪くなっては困るので、毎週のリハビリや装具で関節を正しい位置に戻してあげる事が欠かせません。

 

【膀胱、直腸障害】

脊髄の腰下の神経は排泄に関する内臓の動きも担当しています。

ですので腰より上の脊髄損傷をすると、排泄の感覚がなくなることがあります。

おしっこがしたい、うんちが出そう・・・などの感覚が分からない為、大人になってもオムツで尿漏れの対策が必要だったり、便秘が酷い時は摘便といって指でうんちを肛門から掻きだす処置が必要になります。

脊髄損傷のリハビリテーション|KOMPAS

https://www.normanet.ne.jp/~SIJ/pdf/excretion.pdf

 

ひなたんもおしっこが上手く出なかったせいか、尿路感染症になって生後5ヶ月で入院しました。

来週には膀胱の詳しい検査をする予定です。

これからも、導尿といってカテーテル尿道からいれておしっこを出す処置なども考えていかなければなりませんが、訪問看護師さんたちの手も借りてなんとか乗り越えていけたらいいなと思います。

 

 ではまたー(≧▽≦)